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【映画】【ネタバレあり】『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

2019/06/19

05 Movie

映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』予告3

109シネマズ港北にて2D字幕版を鑑賞。

いきなりだけど、チャン・ツィイーが可愛かった。
40歳だそうだけど相変わらず美しい、というか可愛い、というか少年顔。
良い年の取り方をしていて何より。

体調不良やら突然の用事やらで予定が流れまくっていた『ゴジラ  キング・オブ・モンスターズ』をようやく鑑賞できた。率直に素直な忌憚ない感想を述べると「すごく面白かった」といっていい。ただまあ、カギカッコでくくっているからには、ストレートな面白さではないのが悩みどころ。いやそんなに悩んでないけど。


※ここから先、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』および過去の『モンスター・バース」シリーズ作品のネタバレがあります。未見で、かつネタバレを読みたくない方は、一旦お引取りくださいませ。


『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)の名?シーン。
今作製作者が謝るべき相手は、たぶん熱心なゴジラシリーズのファン。
























【ここからネタバレ】

■超大作バカ映画
事前に得ていた情報を一旦忘れて偏見なく純粋な気持ちで鑑賞し始めたが、比較的最初のパート、モナーク南極基地での「待ち伏せだ!!」と驚くセリフを耳にして、「ああ、『そういう映画』ってことでいいのね」と心を切り替えることができた。この段階で自分の中では『アルマゲドン』や『インデベンデンス・デイ』、『バトルシップ』、『スターシップ・トゥルーパーズ』など同じ「バカ映画」のジャンルに分類されたので、あとは「いかに気に障る部分をスルーして楽しめるか?」というモードに入った。間違っても1954年初代『ゴジラ』なんかと比べてはいけない。初代ゴジラに失礼だ。
そうなるとあとは「バカ映画」の前に「愛すべき」が付くか否か。そこがいちばん重要なところ。私的な判断では、「あふれんばかりの怪獣愛」のお陰で「愛すべきバカ映画」の仲間入りができたと思う。


■無邪気な映画
この作品をひとことで表現すれば、怪獣オタクの監督が撮った「無邪気な映画」。無邪気に怪獣が暴れ、無邪気に都市が壊され、無邪気に人が死ぬ。主要登場人物に気違いと馬鹿しかいない。気違いと馬鹿の濃淡に差があるだけ。理屈や社会正義より感情が優先し、少し悩んだ振りをしただけで次の瞬間には本能に従って行動している。なぜかというと、怪獣たちを暴れさせる舞台を作り、怪獣たちが暴れる物語を推進するのに都合がいいから。登場人物が感情で動くから物語がぐいぐい動く。「普通、そんな選択するか?」って選択をがんがんするから否応なく話は進む。だってこの映画の目的は「怪獣は美しい」「怪獣同士の戦いは尊い」「怪獣は神」だから。人間ドラマパートはおまけ。その割に長い。もうちょっと短くしてもいい。


■無神経な映画
「無邪気な映画」を別の言葉に言い換えると「無神経な映画」。キングギドラが逃げ損ねた足元の兵士を炭にする。緊急脱出したパイロットはラドンの口に吸い込まれ食われる(たぶん製作者はあれをギャグとして撮っている)。特に意味もなく不用意に人が死ぬ。もちろん現実世界で人は特に意味もなく死んでゆく。それは間違いない。ただ、架空の物語でそれを語れるのは物語に一定のリアリティがある場合。基本的にリアリティと距離がある怪獣映画では、死には理由があった方がよい、と個人的には思っている。なきゃいけない、とまではいわないけれど。グレアム博士の死はほぼ無意味な死。芹沢博士の死は物語的に意味のある死(死後の扱い悪かったけど)。そしてエマ博士はなぜ生き残る?

グレアム博士、前作今作とずーっと「どっかで観たけど思い出せない」とか思ってて
さっきググって知った。『シェイプ・オブ・ウォーター』のイライザか。

■オマージュという名の別の何か
往年のゴジラファンを怒らせた本作の「オキシジェン・デストロイヤー」使用シーン。1954年『ゴジラ』で芹沢大介博士が発明した禁断の兵器と同名の(そしてたぶん同様もしくはそれ以上のの威力を持った)兵器。初代芹沢博士があまりの威力に使用をためらったそれを、たかがいち民間組織の指揮官がミサイルで発射してしまう「無神経さ」。しかもたぶん製作者側は「過去作品へのオマージュ」とか思ってる。まあ「だったら『ゴジラVSデストロイア』はどうなんだ?」という話もあるけども。

また、これも初代芹沢博士の最期へのオマージュとも取れる、本作芹沢猪四郎博士の「ゴジラ復活の為の核爆弾自爆」。一見すると感動のシーンだしおそらく製作者もそのつもりで演出してるけど、芹沢博士、日本人なんだぜ。時折手にしていた「動かない懐中時計」は、広島で被爆した父の形見なんだぜ。その芹沢に核を持たせて自爆させる「無神経さ」。しかもその後の最後の戦いで、臨界状態になろうとしているゴジラについてリック博士が「芹沢が気合いを入れすぎちまった!」なんてことを言い放つ。核兵器の脅威について、本当に無自覚なのねアメリカ人て。

なお、ファンの間で、ドハティ監督が愛したのは英語版『怪獣王ゴジラ』(反戦、反核メッセージをカット)で日本版を観ていない可能性が指摘されている。ただ、上記2点について直接監督にぶつける日本の取材者もいないだろうしねえ。真相は明かされるのだろうか?

このような事情なので、オキシジェン・デストロイヤーは「対生物用のすごい爆弾」、芹沢博士の核爆弾自爆は「ゴジラの気付け薬&燃料補給」程度のもので、それ以上の意味は、まったくない。だいたい最後の戦いでゴジラが臨界起こす為に必要なのは、核爆発じゃなくてウランかプルトニウムだろうに。

ついでにここに書いておくと、あんたら「放射能」とやらを便利に使いすぎ。これは日本のゴジラシリーズにもいえることだけども。本来「放射能」という用語はなくて、普通は「放射線」。条件によって放射線を発する、ウランやプルトニウムなどの物質が「放射性物質」。「放射能(線)」自体は核分裂も核融合も起こさないし、エネルギー源として溜め込むこともできない。まあ、ここまで続いたシリーズものの設定に文句いっても仕方ないんだけど、いちおう。

■バカ映画万歳!
なんだかんだといろいろ文句いってるけど、冒頭に挙げたシーンで早々に気持ちを切り替えてたお陰で、映画自体はけっこう楽しめた。ただ、製作者側がもっと「そういう映画」と割り切って、怪獣バトルの時間をあと3割増ししていたら、もっと褒めてたと思う。正直なところ、バカ度がまだ足りない。カルト映画への道は険しい。

以下、突っ込みつつも(それなりに)楽しんだシーンについていくつか。

・怪獣の登場シーン
モスラ、キングギドラ、ラドンの復活シーンはそれぞれ見事な描写。さすがに怪獣オタクはそこは外さない。特にこの3怪獣の「羽根」「翼」の表現。巨大さを見せる為に一気にカメラを引いてからの、幻想的ともいえるはばたき。掛け値なしに美しかった。元々海生生物だったゴジラは海からの登場。これは前作『ゴジラ』と同様、溜めから躍動への動きの緩急が見事。
ただちょっとだけ映画描写上の文句が。人間、お前ら怪獣に近づきすぎ。当然ほとんどが蹴散らされる訳だけど、そりゃ当然だろう、と。サブマシンガンで何とかなる相手じゃないことくらい理解してるだろうに。

モスラは、動きもたおやかでこだわりが感じられた。
さすが「怪獣の女王」

キングギドラのこれ。登場シーンじゃないけど。
あざとく十字架と組み合わせたりして、ずるいわあホント。

・「待ち伏せだ!!」
謎の武装戦力に占拠されたモナーク南極基地に攻め込むモナークの兵隊(Gチームって、Gフォースへのオマージュ?)。正面から堂々と進入して反撃されて「待ち伏せだ!!」いや、そりゃ待ち伏せもするでしょうよ。人質もいるのに杜撰すぎ。でもこのシーンのお陰で気持ちを切り替えて後半楽しめるようになった。本編最初のはっきりした「バカ映画」宣言メッセージ。ありがとう!

・放射熱戦を普通に外すゴジラ
背びれをチェレンコフ光で青く光らせて、溜めに溜めてから満を持して放った渾身の放射熱戦!を思いっきり外すゴジラ(キングギドラはほとんど避けてない)。記事冒頭の予告編でそのシーンあります。「くるぞくるぞ!」と期待していた観客をがっかりさせた。ちなみに反撃したキングギドラの引力光線は3本すべてゴジラに命中している(笑)。


・エマ博士の狂気
「人間は地球を脅かす病原菌」
→「世界中に存在する怪獣たちには地球を調整する役割がある」
→「世界中の怪獣達たち一体ずつ順番に蘇らせ、地球を健全な姿に再生させる」


→大変!予定外で怪獣たちが一斉に蘇っちゃった!

その目的を遂行するのに「一体ずつ」でも「一斉に」でもあんまり大差ないと思うんだけども。「周辺住人を避難させてから蘇らせるから」って娘のマディソンを説得したらしいけど、周辺住人の避難先も当たり前のように破壊すると思うぞあいつら。

まあ、この人がいなかったら、物語は始まらなかったから、そういう意味では今作の功労者といえないこともない。でも、もうちょっと何とかならんかったのか脚本。

・チェン博士とリン博士の双子設定
チャン・ツィイーの二役。いちおう小美人オマージュのつもりらしいけど、両者別撮りで一度も同じ画面に入らない。別にいらなくねその設定。

・ギリシャ・ローマより遥か以前の遺跡にカタカナで「ゴジラ」
すごいな日本の歴史。すごいなカタカナの歴史。

・「芹沢が気合い入れすぎちまったな!」
放射能?を蓄えて臨界に達しようとするゴジラを見たリック博士の台詞。イッツ・アメリカン・ジョーク! バカ映画モードの自分も、さすがにこれはちょっと引いた。芹沢博士が死んでからせいぜい数時間くらいしか経ってないんだぜ……

・怪獣王決定戦の足元で
最強怪獣の座をかけて戦ってるゴジラとキングギドラの足元で、笑っちゃうくらいほぼ真下の足元で、人間がうろちょろしてた。さすがにそれはいかん。それやっちゃったらギャグにしかならない。案の定何人か踏み潰されてるし……

・エンドロール後のアレ
地元の漁師が「最近すっかり魚が取れなくなったんで」
それ、たぶんオキシジェン・デストロイヤーのせい……

ところで、ラストの怪獣王に他の怪獣がひれ伏す場面が不満な人がけっこういるみたいで、まあ怪獣が露骨に人間の真似するのは確かにアレだけど、でも私は、逆にワクワクしている。
数々の怪獣がひれ伏す、そんな最強の怪獣王に、次の映画で、あの髑髏島の「まだ成長途上だった」コングが挑むんだよ。どんだけ強くなって帰ってくるのか想像できない。次回作が楽しみで仕方がない。まあ物語的にはあまり期待しないけど、戦闘シーンだけでも一見の価値がありそう。というか、ほぼ戦闘シーンだけで1本作ってくれないかなあ?人間描けないんだし、そもそも最初から描く気ないんだから、いろいろ振り切ってさあ。