【映画】【ネタバレあり】『GODZILLA ゴジラ』(2014) を観た勢いで、こちらも『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(KOM)の予習としてAmazon Primeにて鑑賞。直前にこれ観ておけば、KOMにそれほど腹立てるようなことはないだろう、という嫌らしい目論見が。KOMってこれのリメイクなんでしょ?え?違うの?
1968年生まれの私だけど、ゴジラシリーズ(もちろん昭和の)は、夏冬休み時期に地上波で(って衛星放送なんてなかった)嫌というほど放送してたので、だいたいのところは観ている。観た記憶がないのは『ゴジラ』『ゴジラの逆襲』『ゴジラ対ヘドラ』あたりだろうか。なお、当然レンタルビデオなどという商売はない。そもそも映画のパッケージ販売もなければ、ついでに家庭用ビデオも普及していない。「そのとき観た記憶がすべて」だった。
今回観返して(たぶん前に観たのは昭和末期のレンタルビデオ)、過去の記憶がけっこういい加減だったり、でもごく一部の些細な部分についてはめちゃくちゃ正確だったり、という事実をあらためて実感。後から振り返って映画感想を書くときには、直前にちゃんと作品を観直さないといかんなあ、と。
2019年の現在から、1964年、55年前の映画のストーリーや描写の細かい部分にあれこれ文句いってもしょうがない。比較分析はあって良いけど、いちいち突っ込むのは野暮というもの。そもそも、基本的に「子供向け」映画なんだし。上に挙げた当時の予告編を観れば一目瞭然。1作目の『ゴジラ』だけが異質だったのよ。しかもその『ゴジラ』だって、さすがに子供向けではなかったとはいえ、公開当時は大スペクタクル映画として極めて扇情的に宣伝された訳で。
もちろん本編では水爆、兵器の恐ろしさを描いているにしても、客を入れる為の惹句が「水爆大怪獣映画」ですよ。今のスペクタクル映画(ってあんまり言わなくなったね)やホラー映画と方法論は一緒。まあ、ある意味で「映画興行って昔も今もまったく変わってないなあ」という事実に感動すら覚える訳だけど。
流れのついでに書いておくと、昭和シリーズより平成シリーズやミレニアムシリーズの方が、ターゲット年齢は高い。これは「子供向けでは採算が取れない」「大人の特撮好きを引き込まないと商売にならない」という現実的な事情もあるだろうけど、製作側の「初代『ゴジラ』の呪い」があると考えている。「ゴジラは『基本的には』シリアスなものなんだ」という呪い。そのくせ、モスラもラドンもキングギドラもメカゴジラも、それ以上の「ゴジラを脅かす怪獣」も出したがるんだ。だって、面白いから。ゴジラシリーズの面白さがそこにあることを、体感的に知っているから。「怪獣の神秘性を望みつつ怪獣プロレスを作る」努力をしたのが平成&ミレニアムシリーズなんだろうなあ、と思う。いっそのことエンターテインメント方面に全振りする勇気があれば……『ゴジラ FINAL WARS』が出来上がる(笑)(実は個人的にはけっこう好き。「数あるゴジラシリーズの1作としてはぜんぜんありだけど、最終作としては認められない」くらいの立ち位置)。
っていうか、勢いのまま書いてきたけど、この部分はそのまま『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の感想に使おう。そうしよう。
閑話休題。本作『三大怪獣 地球最大の決戦』は、あからさまに子供向けの映画である。たまたま来日していた公国の王女が金星人で予知能力者だった。たまたま地球に(日本に)現れていた3頭の怪獣は話し合いの結果、外敵と戦う。公国の王女を暗殺する為の集団が話の本筋とは関係なく場をかき回す(ことでサスペンス性を高めつつ尺を稼ぐ)。3大怪獣とキングギドラを戦わて子供たちを喜ばせる為の方便としての設定に、いちいち愛のない突っ込みをするのは無粋。しかも、Wikipediaの記載を信じると、本来公開予定の『赤ひげ』(黒澤明)が完成しなかった為の代替作品らしい。撮影期間どれだけあったんだこれ…… そんな状況の中では善戦してると言えない?言えないか。
という訳で脚本はそれなりだが、俳優の演技は意外としっかりしている。夏木陽介、星由里子、志村喬、佐原健二ら当時の映画スターたちは、子供向け作品だからと手を抜かず、少なくとも通常の映画やドラマのレベルで演技している。平田昭彦はちゃんと平田昭彦の演技をしている。小美人の声は揃っている。宝田明はまだいない。残念(何が?)。
さて、メインの3大怪獣対キングギドラの戦い。
ネットで検索すると「怪獣が戦う時間が少なすぎる」という感想がちらほらあるけど、まあそこはいろんな事情があったのだろう。特撮って、すごくお金かかるのよ。魅力的な戦いを可能な限り撮影しておいて、人間ドラマパートの中に配置する。尺が足りなければドラマ部分を増やす。推測だけど、基本的な制作手順はそんなとこだろうと思う。
55年前の特撮でここまでやってくれたら、個人的にはもう御の字だなあ。特にキングギドラの動き。3本の首と2本の尾がそれぞれ独立して動く美しさ。3筋の引力光線の軌道と破壊の描写。生理的に嫌悪感を与えるような金属音的な泣き声。「吊りは日本の伝統芸」でおなじみ、当時最先端の操演技術を駆使して「未知の最強宇宙怪獣」を想像したスタッフには感謝の気持ちしかない。遠方から近づくキングギドラが放った光線が、つい先ほどまで人が立っていた鳥居の手前に直撃して爆発するシーンなんて、鳥肌が立つほど美しい。
ただ、3大怪獣との戦いがほぼ肉弾戦のみなのは、さすがにいかがなものか。糸を出すモスラはまだましな方で、ラドンは口ばし攻撃がメイン。ゴジラに至っては石投げたり蹴ったりするだけで一度も放射熱線を吐かない。「特撮はお金がかかる」と先に書いたが、それでもこの展開は残念かな。個人的な不満があるとすれば、そこだけ。だってもっと派手にした方が子供は喜ぶじゃん!
ということで、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、その辺の不満が解消されていることを期待している。まあ、けっこういろいろ聞こえてきてるので「その点については」大丈夫だと思うんだけど。