ラストパート仕上げてからその後に「マルチバース解説」!!
※ここから先、『アベンジャーズ/エンドゲーム』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、および過去のMCU(Marvel Cinematic Universe)作品のネタバレがあります。未見で、かつネタバレを読みたくない方は、一旦お引取りくださいませ。
【ここからネタバレ】
■キャプテン・アメリカ、ストーン返却の旅
2012年のエンシェントワンとの約束(後述)もあって、過去から集めた6つのインフィニティ・ストーンを返す時空の旅に出るキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。なにもひとりで全部返さなくても…… とか思ったけど、おそらくこれは本人からの申し出があったのではないかと。その理由は、数分後にあきらかに。
■バッキーとスティーブのやり取り
スティーブ「俺が戻ってくるまで、馬鹿なことはするなよ」
Don't do anything stupid until I get back.
バッキー「お前がいないと、馬鹿はできない」
You're taking all the stupid with you.
これは『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』における、出征するバッキーと残るスティーブのやり取りそのもの。ただし発言者が逆になっている。
"Steve and Bucky - Don't do anything stupid till I get back"
- Captain America and Avengers Endgame
■バッキー知ってた?
ストーン返却の時空の旅に出たスティーブ。(こちらの世界での)5秒後には戻る筈だったのでカウントダウンをするバナー博士(ハルク)とサム。しかしキャプテンは戻ってこない。慌てまくるふたり。それに対して、バッキーは、特に驚きもせず、微笑を浮かべている。
推測だけど、たぶんスティーブと、それについての具体的な話はしてないんじゃないかな。ただ、長年の付き合いで察するところがあり「ああ、あいつは向こうに残ったんだな」というような気持ちだったんじゃないだろうか。
そして、湖畔のベンチの「老人」を見つけたときも、それほど慌てた様子は見せなかった。(それがどういう理屈であったのかバッキーが即座に理解できたとも思えないけれど)彼が誰なのかはにすぐ気づいたバッキーは、あえて自分が先に行かず、サムを促す。
推測だけど、たぶんスティーブと、それについての具体的な話はしてないんじゃないかな。ただ、長年の付き合いで察するところがあり「ああ、あいつは向こうに残ったんだな」というような気持ちだったんじゃないだろうか。
そして、湖畔のベンチの「老人」を見つけたときも、それほど慌てた様子は見せなかった。(それがどういう理屈であったのかバッキーが即座に理解できたとも思えないけれど)彼が誰なのかはにすぐ気づいたバッキーは、あえて自分が先に行かず、サムを促す。
■老キャップの人生
ベンチに静かに佇んでいたのは、老いたスティーブ・ロジャース。以下はサムとの会話。
「以前トニーが~」の部分は(残念ながら、この部分は字幕でも吹替でも割愛されている。もったいない!)『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のラストの、今後の互いの人生を語り合うこの会話と思われる。
サム
「さて、何かが上手くいかなかった?それとも何かが上手くいった?」
スティーブ
「ああ。ストーンを返したあと、私は思った。以前トニーがそうするように言っていた、そんな人生を過ごしてみたくなったんだ」
サム
「どうだった?」
スティーブ
「美しかったよ」
(中略)
サム
「彼女について話したい?」
スティーブ
「いや…… いや、話したいとは思わないかな」
「以前トニーが~」の部分は(残念ながら、この部分は字幕でも吹替でも割愛されている。もったいない!)『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のラストの、今後の互いの人生を語り合うこの会話と思われる。
トニー
「ペッパーが農園を作る。誰もそれを吹き飛ばさないように願っているよ」
スティーブ
「シンプルな人生だね」
トニー
「いつか君もそこに行き着くさ」
スティーブ
「わからない。家族、安定……それらを欲した男は75年前に氷漬けになった。そこから出てきた男は、別の誰かだったんだろう」
Avengers Age of Ultron - Ending Scene
多くは語らないが、老スティーブがベンチで佇むまでに歩んできた人生のヒントが(エンディング前の映像を含めて)いくつかある。
- すべてのストーンを返した後で、ペギー・カーターとの「約束」を果たす為に(おそらく)1945年のアメリカにタイムトラベル(1945年はキャプテンが北極で消息を絶った年。エンディング前のダンスシーンで、邸の前を通った車が1940年製とのファンの報告あり)。
- その後、ペギーと一緒に年老いるまで一緒に過ごした(老スティーブの左手薬指に指輪がある。結婚までしたかどうかは不明)。
- タイムトラベル出発当時の2023年のサムとバッキーに会う為に、盾を持って、出発場所である湖畔にやってくる。
Captain America - Plane Crash Scene
おそらく「美しい思い出話にしておきたい」という製作者側の都合もあって、これ以上の「事実」は分からないのだけど、それでもこれらの事実と、タイムトラベルという特有の問題が絡んで、実はけっこう異なる説が出てきている。ファンの間でも、そして製作者の間でも説が分かれるという事態に。
■老キャップ周辺の矛盾
左側のルッソ兄弟(監督チーム)説。
『もしキャップが過去に行ってそこで生きたなら、そこで世界線は分岐するだろう。彼が結婚して人生を送ったのは本史とは別の宇宙だ。サムに盾を渡す為、キャップはGPSで元の時間軸に戻ってきた』
右側のマーカス&マクフィーリー(脚本家チーム)説。
『作中でエンシェント・ワンはインフィニティストーンをその時間軸から動かしたときに世界線が分岐すると明示している。よってスティーブが過去に戻りそこで暮らすだけでは世界は分岐しない。だから私は「スティーブが平行世界で生きた説」は否定する』
監督説は、設定的に大きなな矛盾はないけれど、美しい余韻に欠ける。特に「時空GPSを操作して2023年に『バナーやサムに見つからないように』戻ってきて、量子スーツ脱いで(スーツ着ないと時間跳躍できない)こっそり湖畔のベンチに辿り着く老キャップ」を想像すると、微笑ましいけどちょっと間抜けかなあ、と。
あと、この監督説を補完する描写が『エンドゲーム』内には存在する。5秒後になってもスティーブが戻ってこないことに慌てるバナー(ハルク)がタイムマシンのモニタを覗きながら言う「(原因が)分からない。タイムスタンプによると彼は正しく戻ってきている。彼はここにいる筈だ」。スティーブの時空GPSモニタリングの結果では、スティーブは「行って、戻ってきた」ことになっている。もし(後述する)脚本家説のように、それ以前からこの世界線に存在しているならば、そんな結果は出ない。
脚本家チーム説は、そもそも今回のマルチバース設定と相反している。
「キャプテンがストーン返却の旅に出るまえから湖畔に佇んでいた老キャプテン」という不思議な光景が、すごく画として良いのは分かる。ただ「過去に飛んだキャップが、分岐しない本編の時間軸を今まで過ごしてきた」となると、MCUシリーズで起こった数々の事件、出来事、悲劇について、二度目の人生を送ったキャップは傍観もしくは無視していたのか?、という大きな疑問が沸いてしまう(シリーズの各事件の描写の中で「それを未然に防ごうとしたもうひとりのキャップ」が出てきたことないでしょ?)。数々の悲劇、人の死に対して、あのキャプテンの性格からして、無視できるのか?あのキャプテン・アメリカが、『ウィンター・ソルジャー』のS.H.I.E.L.D.内ヒドラの陰謀を、『エイジ・オブ・ウルトロン』のワンダの暴走を、『インフィニティ・ウォー』のヴィジョンの死を、『エンドゲーム』のナターシャやトニーの死を、黙って見過ごしたのか?という。また細かい点でいうと、ペギーの数々の言動(スティーブ行方不明後、彼が救った別の兵士と結婚した云々)とも矛盾する。まあ晩年のペギーは認知症だったという設定もあるけど、それでも「ペギーのいったことは全部嘘でした」ってのはさすがにどうかと思う。
という風に、脚本家チーム説は、ロマンティックではあるけれど穴だらけなのである。
ところで、脚本家チームの拠り所、
『作中でエンシェント・ワンはインフィニティストーンをその時間軸から動かしたときに世界線が分岐すると明示している』
だけど…… エンシェント・ワンとバナー博士(ハルク)のあの会話、私が1回目に見たときに「ん?これおかしいぞ?」と感じたくらいなので、かなり問題のある台詞。
というところで、小ネタ集4「キャプテン・アメリカ・フォーエバー編」(今つけた)をここで終了させて、次は、上で問題になった「マルチバース」の解説。SF好きならけっこうスムーズに入れるんだけど、普通の方は訳分からんでしょう。