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【映画】【ネタバレあり】『ダンスウィズミー』

2019/08/26

05 Movie

TOHOシネマズららぽーと横浜にて鑑賞。プレミアスクリーン回だったんだけど料金一緒なのね。お得。

映画『ダンスウィズミー』本予告【HD】
自分にちょっと無理をしながら一流企業で働く鈴木静香は、催眠術である日突然、音楽を聞くと、いつでもどこでも歌わずに踊らずにいられないカラダに! 携帯の着信音、駅のホーム音、テレビや街中で流れるどんな音楽でも、自分の意志に反して勝手に歌って踊りだしてしまう・・・。仕事もお金も失った静香は、催眠術師を探して日本中を駆け回るが、果たして静香は元のカラダに戻れるのかー?歌い、踊り続ける中で彼女が最後に見つけた大事なものとは――。  
映画『ダンスウィズミー』矢口史靖監督初のミュージカルコメディ、三吉彩花が歌って踊る - ファッションプレス
予告編を観てね、本当にわくわくしてた訳なんですよ。何しろ設定がめちゃくちゃ魅力的。いわゆる「ミュージカル映画」の「どんな場所でも突然歌い踊りだす」というお約束をダシにして、ひっちゃかめっちゃかコメディが観られるのかなあ、と。しかも主演は美女! 監督は矢口史靖! これが期待せずにおれますか。

そんな期待を抱いて映画館の席について103分。ラストまで鑑賞して「ああ、ええもん観させてもらいました」という感覚は間違いなくあった。良い笑いもあったし好きなシーンもいくつもあった(後述します)。出演者の人選もバッチリだし、それぞれのキャラクターも立ってたし(借金取りチームにあんな見せ場があると誰が想像したであろう)、準備万端、素材も良し! の筈だったんだけど…… もうちょっと、もうちょっと何とかならなかったものだろうか…… という思いを捨て去ることができなかった。
私は映画の感想を書くときに点数はつけない主義だけど、あえてこの映画に点数をつけるとすれば、100点満点で70点くらい。「悪くはないけど絶賛もできない」というのが正直なところ。予告編のワクワクがほぼ実現できてれば90点は堅かったんだけど、ぶっちゃけ「惜しい」「勿体ないなあ」と思う。

あ。でもトータルで読むとけなしてないので、長いけど最後まで読んでいただけると。

※ここから先、『ダンスウィズミー』のネタバレがあります。未見で、かつネタバレを読みたくない方は、一旦お引取りくださいませ。

 
さくら学院SUN!(Sakura Gakuin SUN!) オープニング 生徒紹介

三吉彩花、ベビメタ界隈の自分としては「元さくら学院」のイメージが強かった。
ずいぶん大きくなって…… って書く予定だったんだけど、ぶっちゃけ、雰囲気あんまり変わってなかった。中学時代からクールビューティだったのよね。





















【ここからネタバレ】

ここからは、ネタバレも交えつつ、「惜しい」「勿体ないなあ」と私が感じた部分をいくつか挙げていき、最後に「でも好きな部分も多いよ」ってところに触れる予定。

【ミュージカル映画としての『ダンスウィズミー』】
ミュージカル作品を手掛けるのは今回が初めてだという監督は、当初、突然歌って踊り出すミュージカル映画には抵抗を感じていた。しかし、だからこそ「なぜ急に歌う!?踊る!?」という作品に対する疑問に答える映画を作りたかったという。
  映画『ダンスウィズミー』矢口史靖監督初のミュージカルコメディ、三吉彩花が歌って踊る - ファッションプレス
引用先のページタイトルにもあるように、本作は「ミュージカルコメディ」ということになっているが、上の矢口監督の言葉を受ければ「コメディ要素のあるミュージカル」ではなく「ミュージカルを素材にしたコメディ」ということになる(より正確に書くと「『突然歌って踊り出す人』を素材にしたコメディ」か)。少なくとも「普通のミュージカル映画」ではない。なので、ミュージカルシーンは事前に想像してたよりも少ない。しかも大盛り上がりのミュージカルシーンは前半でほぼ終わり。途中からなぜかロードムービーになる。歌って踊っては、新潟の不良(なのかダンスチームなのか)の場面とラストしかない。1時間20分で大きなの4つはちょっと少なくないかなあ。いや「普通のミュージカル映画じゃない」って書いたのは確かに自分だけど、でも、予告だとそこが大々的にフィーチャーされてて、私が期待したのもそこだったのよ。「勝手に期待したお前が悪い」って言われればそれまでだし、映画予告が本編そのものを表している訳ではない、ってのはまあ既知の事実ではあるけど、でも『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』の監督よ?期待しちゃうじゃない。
なお、ネットの一部で批判されたり残念がられたりしている「ミュージカルシーンの質(歌とダンス)」については、個人的には特に不満はない。欧米本格ミュージカルのレベルのものが出てくればそりゃ大満足だけど、そもそもがそういう映画ではないっしょ。ぶっちゃけてしまえば「予算」という問題もあるし。三吉彩花のダンスは本格的ではないかもしれないけど美しい。見た目だけでなく、所作や佇まいも美しい。いつまででも見ていたかったよ。基本すべて笑顔で演じていて楽しそうだったしね(実際はそれどころじゃなかったにしても)。


映画『ダンスウィズミー』「ACT-SHOW」フィルムクリップ【HD】

「掃除のおじさんの後ろで無音でエアギター」の批評性と面白さ!
「ふん!ふん!」言ってる三吉彩花が可愛い。

映画『ダンスウィズミー』「Happy Valley」フィルムクリップ【HD】

「オフィスでダンス」はミュージカル映画でよくあるパターン。
シュレッダー紙くずの花吹雪!!そしてその後の逃げ足の速さ(笑)

映画『ダンスウィズミー』「狙いうち」フィルムクリップ【HD】

これは本当にすごい。見事。ぶっちゃけ本映画のクライマックス。
妄想内ですべて成功していたテーブルクロス引きが実際はすべて失敗していて壊した食器類の代金全部請求されてたのは、静香には悪いけど大笑いした。

【ロードムービーとしての『ダンスウィズミー』】
さて、中盤でいきなり出てきた、事前にはまったく想定していなかった「ロードムービー」要素。催眠術師マーチン上田のサクラで自らも被害者(無給で働かせられた)斎藤千絵との凸凹コンビの珍道中は確かに面白いし、ハートウォーミングな部分もあるし(矢口監督の真骨頂)、最終的な静香の成長にはかかせなかった要素。だったとは思う。ただねえ、ちょっと長すぎかなあ、と。いちおう先に書いた新潟のダンスチーム抗争での大きなダンスシーンはあって、実はあのダンスは妄想一切なしで、本当の意味で「歌と踊りでピンチを切り抜けた」場面で、シーンとしては大好きなんだけど、映画の構成的にはあの辺の部分ごっそりカットしても良かったんじゃないだろうか?謎のストリートミュージシャン山本洋子との出会いのエピソードはもうちょっと簡単にして。物語や演技の良し悪し云々以前に、物理的にダレるのよね。正直、ちょっと観ていてキツかった、というのが本音。

※2019/8/27修正
冷静に考えたら、本作は103分しかない。つまりダレたのは「物理的」にではなく、話の展開の方に問題があるのだと気づいた。時間を短縮するのではなく、賑やかで華やかなシーンをひとつふたつ増やす方向でいくのが正しい気がしてきた。なので新潟のダンス対決はそのままで(そもそもシーンとしては好きなのよ)、例えばその新潟不良に絡まれるきっかけとなったあの路上で派手にカーチェイスするとか。何かのきっかけで電源オンになったカーラジオからはKenny Logginsの「Danger Zone」。邦楽が良いならT-SQUAREの「TRUTH」。「ルパンIII世のテーマ」なんかもいいかもしれない。泣きながら必死でハンドル操作する千絵の横でノリノリで歌い踊る静香。絵としては悪くない。けどお金はかかるかな。あと、結婚式場のアレも、静香が加わって大パニック!(って洋子ひとりで十分パニックだったけど)とか。あ、静香が率先して参加すると犯罪者になっちゃうのか。難しいな。

いちおう書いておくと、ロードムービー自体は嫌いじゃないです。でも今日はロードムービーを観に来た訳じゃないし。ひとつひとつのエピソードはどれも面白く、登場人物みんなが少しずつ愛おしくなってくる場面だから勿体ないといえば勿体ないんだけど「1本の映画」としては、やっぱ冗長。ミュージカル映画を模した映画でテンポが悪いのはさすがに良くないと思うのです。なお、弘前~函館~札幌はぎゅっと詰まっててテンポは良い。トランクから洋子が出てきたときには「あんたまる1日そこにおったんかい!」と吹き出したことを報告しておきます。ダイハツ オプティのトランクってめちゃくちゃ狭いぞ。


【矢口史靖映画としての『ダンスウィズミー』】
「悪人は出てこない」「徹底的に不幸になる人はいない」「最後はハッピーエンドで終わる」これらは、矢口史靖監督作品ということで、事前に予測できた要素。直近作の『サバイバルファミリー』も、一歩間違えば壮絶な話になりかねない(し、実際にちょっとそっちに片足突っ込む描写はある)ところを、ギリギリのところで回避して、ついでにいうと文明論も微妙なところでスウェーして、現代日本の家族のあり方という落としどころに着地できていた(ただ、その分笑いの要素がちょっと損なわれていた。題材が題材だけに仕方ない)。今後、がらりと作風を変えることがなければ、これらが矢口監督の特徴であり、信用ポイントである。
この見方でいえば、本作は見事なまでに「矢口史靖映画」に仕上がっている。そこは安心していい。まあ、登場人物ひとりひとりを掘り下げて細かい部分までフォローする姿勢が、本作におけるテンポの悪さの原因になっている感じはちょっとするんだけども。



【総論】
いろいろ書いてきたけど、実はもう一度観たいと思っている。ただし、冗長部分をしっかり耐えられる体力があるときに。その程度には、登場人物ひとりひとりを気に入っている。鈴木静香の不器用さと愛らしさ、最後の決断(はもうちょっと伏線多めに欲しかったところだけど)。斎藤千絵のいい加減さと切なさ(ハセガワストアのカップ麺のシーンで泣きそうになった。あれは自己責任ではあるんだけど。しかも持ち前の明るさで乗り切ってしまうという)。ストリートミュージシャン山本洋子の不可思議さと思い切った行動(最後、あれ道警に自首したんだろうなあ)。マーチン上田の食えない人物像(でも震える手を見つめる悲しい目で許してあげたくなる)。借金取りチーム(なんでお前ら仲良くなってる。そしてなぜ静香の入場券おごった。実は良い奴かお前ら)。


【小ネタ】
・モテモテエリート村上の人でなし描写が細かい。
「モテそうな笑顔を作っている(と分かっていた静香ですら篭絡しそうになる)」
「まだよくは知らない筈の静香とキスしようとする(静香のお腹が鳴らなければ……)」
「食事中、自分は車なので水しか飲んでない癖に静香にはがんがんワインを飲ませる」
「(冒頭にOL連中が語っていた)「繁忙時に有給3日取って居づらくなって退社したOL」が実は村上のお手つきで、辞めさせる為に村上が有給を取らせていた」
最低だよね。だからラストは爽快なんだけど。


・静香の部屋の描写
部屋は広いし物も多くて金を稼いでるように見えるけど晩酌は発泡酒。
普通のOLよりは稼いでるんだろうけど、それでも無理してるのよねあれ。

・興信所の調査費用の内訳
実は筆者は元々探偵小説マニアで、昔、探偵の調査費用をいろいろ調べたことがあるんだけど、20年前で確か「1日5万プラス必要経費。プラス調査日数分。成功報酬は別」だったので、だいたい合ってると思う。というか、今回、お金描写がシビアよね。ストリートミュージシャンであんなに稼げるのか?という疑問とかはちょっとあるけど。

映画『ダンスウィズミー』変顔デュエット編 本編クリップ【HD】

「変顔デュエット編」て(笑)
「歌ってるときはミュージカルスター。戻ると一般人」の演技が見事な三吉さん。
そして出番は少なかったけどムロツヨシはムロツヨシだった。良い芝居するわあ。

・札幌市民会館
単純な両替は断られるけど、入場券を購入する為の両替はたぶん断られないと思うの。というか、札幌育ちの私は「札幌市民会館」という呼称がとっても懐かしかったのです。調べたら自分がいた頃とは違う場所に移転改装したみたいだけど。よくライブとかイベントに行ったなあ。って映画の感想でも何でもないな。