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【映画】【ネタバレなし】『スパイダーマン:スパイダーバース』

2019/03/27

05 Movie

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』予告3

109シネマズ港北にて吹替版を鑑賞。

洋画は基本的に字幕で観る主義なのだけれど、この作品については圧倒的に吹替版をおすすめする。話題作り先行の芸能人有名人起用などまったくない、全声優がプロフェッショナルな仕事をしている。声優を選んだ(のかな?)音響監督の岩浪美和の手腕も素晴らしい。ベストマッチ!

観終わった直後、いや観ている最中にすでに「あ、自分は今、とんでもないものを目にしているな」という実感があった。より分かりやすく表現すると「ヤバいわコレ」。
映像そのものに圧倒されたのは『マッドマックス 怒りのデスロード』以来か。いや『この世界の片隅に』や『シン・ゴジラ』もあったか。ただこれらはいずれも「誠実に丹念に作り込んだ画を、こだわりのセンスで構成する」という、非常に正攻法の映像美(もちろん、それはすごいことだ。それができていない映画は星の数ほどある)であったのに対して、『スパイダーマン:スパイダーバース』は、「最新技術を惜しみなくつぎ込んだ上にさらにひと工夫して作りこんだ画を、最新のセンスで構成する」という、「正しく知恵と手間とお金を突っ込んだ」映像になっている。前者が「職人芸」の比率が高いのに対して、後者は「衆知結集プロダクト」。ひょっとしたら後者を批判してるように感じられるかもしれないけど、そんな気は毛頭ない。確かな人と技術にしっかりお金をかけて、きっちりとした製品を完成させる。立派な「プロフェッショナルの仕事」である。

あと、これは書いておかないとフェアじゃないような気がするので書くが、自分には先天赤緑色覚異常があるので、この作品が狙った色彩効果についてはおそらく半分以下しか体験できていないだろうと思う。残念だけれど仕方がない。その分「ルービックキューブの色がうまく判別できないスパイダーマン・ノワール」の感覚がものすごく理解できた訳だけれども。

とりあえず、まずはネタバレなしの感想から。ネタバレありは後日。

とはいっても、そもそもネタバレを極端に心配しなきゃいけない映画でもないとは思うんだけどね。
公開前の段階で公式が「マルチバース設定であること」「オリジナルのスパイダーマン(ピーター・パーカー)が早々に死んでしまうこと」「主役の座を継ぐのが黒人少年であること」(※正確には「アフリカ系/ヒスパニック系アメリカ人」)「複数の異なる次元のスパイダーマンが一堂に会すること」等々を公開している。そうなると、ネタバレになりそうな部分は「どういう戦いが繰り広げられるか?」「世界の危機をどう救うか?」くらいのものである。多元世界や複数スパイダーマンという一見奇をてへらった設定で惑わされそうになるが、何のことはない。物語的にはかなり王道。枝葉をそぎ落としてシンプルに表現すれば「主人公の成長物語」である。正確には「主人公+αの成長物語」かな?この辺はあとで【ネタバレあり】記事で。


で、ちょっとここから長めの脱線。

「スパイダーマン」は1960年代にマーベル・コミックで誕生以来、世界各国で愛されてきたヒーロー。60年近く経った今でも新作が作られる程人々に親しまれてきた。キャッチフレーズは「Friendly Neighborhood(親愛なる隣人)」、愛称は「Spidey(スパイディ)」。

なお、日本人が最初に目にした「スパイダーマン」はたぶんこれじゃないだろうか?さすがに私も生まれる前の作品だけど、何度も再放送してたんで観ていた。普通に歌えるし。

アニメ版スパイダーマンOP(1967年)

あと、これ(笑)

スパイダーマン日本(1967年)

これ、東映はちゃんとマーベルの許可取ってるからね!(当たり前だ)。巨大ロボット「レオパルドン」は海外スパイディファンにも大人気!スパイダースーツ着ている以外は戦隊モノじゃねーか!とか言っちゃ駄目。マーベラー!!

漫画とアニメ(と東映特撮)でしか表現できなかった「スパイダーマン」だったけど、CG技術が進化して実写でも物語を作れるようになった。2002年から始まった実写化作品は、大きく分けて3シリーズある。


いわゆる無印『スパイダーマン』サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の3作品。
作品の出来もよく好評(特に人気があった日本市場は重要視されていた)で、当初はパート6まで予定があったが、4以降の脚本が難航して残念ながら打ち切りの憂き目に。いちおう3作でほぼきれいに完結しているのが救いか。


マーク・ウェブ 監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の『アメイジング・スパイダーマン』2作。 サム・ライミ版とは直接の繋がりのないリブート作品。作品の出来は良かった(と個人的には思う。大好きです)のだけれど、パート2がちょいコケしてこちらも打ち切り。続編への伏線張りまくりだったのに無念の終了。


そして2017年に再びリブート。ちょっと事情が違うのは、既出2シリーズがソニー・ピクチャーズ製作(正確にはマーベル・スタジオと共同製作)なのに対してこちらはマーベル・スタジオ単独製作。配給のみソニー・ピクチャーズ。この辺の事情の詳細な説明は他のサイトがあるので簡潔に書くと、かつて業績不振にあったマーベル・エンターテインメントは『スパイダーマン』の映画化権をソニー・ピクチャーズに売り渡しており、現在も所持していない。その後『アイアンマン』から始まった「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」の快進撃と、既に書いたソニー・ピクチャーズの『スパイダーマン』2シリーズの不振があって、両社は業務提携を結ぶ。これで晴れて『スパイダーマン』を製作できるようになったマーベル・スタジオが、MCUに合流させる形で製作したのが本作品。ただし今後の契約次第では続くかどうか…… というのが今の状況。

契約上はいつでも『スパイダーマン』シリーズを作れるソニー・ピクチャーズ。しかし実写シリーズは2度コケて次作っても必ず当たるとは言い切れない。契約上、配給権は押さえてるので、むしろ実写版は破竹の勢いのマーベルに作ってもらった方がヒットするだろう。とりあえず『スパイダーマン』のスピンオフ『ヴェノム』なんて作って様子見つつ(ちなみに『ヴェノム』はそこそこヒットした)、さて『スパイダーマン』はどうしようかなあ…… アニメだと『くもりときどきミートボールのこと、アニメでやってみるか!
という状況で、才能と野心のある若いスタッフを終結させて、ものすごく気合を入れて作られたのが本作『スパイダーマン:スパイダーバース』。

以上で、『スパイダーマン』映画化についての長い脱線は終わり(笑)


最初の方で「技術的なことは分からん」と書いたけど、アニメーション作品として画期的なことをしているのは分かる。基本は3Dアニメだけど、3D映像作った後で「あえて」手書きを加えている。3Dのままでは表現できないコミック的表現(吹き出しや漫符、ドット風色塗り、動きのデフォルメ等)を付け足して躍動感、疾走感を増している。また「多元世界のキャラクター」を表現する為に、動きのフレーム数や塗り方もそれぞれ変えている。特にスパイダーマン・ノワール、ペニー・パーカー、スパイダー・ハムについては輪郭以外ほぼ手描きの筈(間違ってたらごめんなさい)。「最新技術を惜しみなくつぎ込んで丹念に作りこんだ画」にさらに手間をかける徹底ぶり。当然お金もかかってるだろう(金金うるさい、と思われるかもしれないけど、良い作品作りにとってお金って大事よ。必要なところに必要な資金は投入しなきゃいけない。根性でカバーしてる場合じゃない)。

そんな「最新技術+職人的技術」で表現したかったものは何か?どんな物語を紡ぎたかったのか?については、次に書く【ネタバレあり】感想まで待って(笑)。


【追記】
『スパイダーマン』が世界中でどれくらい愛されているか?がひと目で分かる映像を見つけたので紹介。上記脱線で触れた「MCUシリーズに加わった最初の作品」は、単独作ではなくてゲストで登場した『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』なんだけど、それが初めて公開されたトレーラー映像を目にした世界中のファン(日本人は残念ながらいないみたい。ロシア人までいるのに……)のリアクション動画がこれ。

Spider-Man Reveal - Reactions Compilation

1時間あるけど(笑)、暇なときに観てみて欲しい。「出演することを知っていた人」や「うすうす感づいていた人」に混じって「出演することをぜんぜん知らなかった人」のリアクションが本当に素晴らしい。特に女性と子供の反応は派手で、申し訳ないけど笑ってしまう。愛だなあ。

あと、世界のオタクに共通なのは、部屋の様子とTシャツのセンス(笑)。